頭痛には怖い頭痛と怖くない頭痛があります。
頭痛持ちと思っている頭痛は、特に病気で起こるわけではない「こわくない頭痛」です。
代表的なものとして、片頭痛(偏頭痛)、緊張型頭痛、群発頭痛などがあります。
片頭痛(偏頭痛)は、ズキンズキンと痛むタイプの頭痛で、多くは頭の片側に起こります。
発作的に起こり吐き気を伴ったりする、とてもつらい頭痛です。身体を動かすのが辛くなり、光や音の刺激で悪化したり(光過敏・音過敏)、匂いに敏感になったりします。周期的に起こり、日常生活に支障をきたして、仕事や家事を休まざるを得ないこともあります。
前触れとして、視界に何かチラチラ・ギラギラするものが拡がったり(閃輝暗点)、手足のしびれ・脱力を感じたり、言葉の喋りにくさが起こったりすることがあります。片頭痛は一次性の頭痛ですが、前兆のある片頭痛は脳卒中のリスクとなりうることが知られており、注意が必要とされます。
緊張型頭痛は、肩こりなどの緊張に伴う頭痛です。
いわゆる「けんびき」のある人によく起こります。頭痛の中で最も多いもので、重苦しく、締め付けられる感じがする頭痛です。また、ストレスの影響が大きく、パソコンを長時間使用する人や、運転手さんにもよくみられます。
群発頭痛は、頭痛がある期間に集中して、片目の奥に起こるもので、七転八倒するほどのたまらない痛さです。
毎日同じ時間に起こることがあり、夜中に激痛で目覚めたりすることもあります。心が折れそうになるほど、とも言われます。
男性に多いのも特徴です。
多くの一次性頭痛は、投薬などの治療でコントロール可能です。しかし慢性のものであるゆえ、完治は難しいという側面もあります。
特に片頭痛や群発頭痛は、強い頭痛のことが多いです。頭痛が強くても、それが今まで時々あった種類の痛みであれば、こわいものではないといえます。痛みが長く続くことや、痛み止めが効かないことを心配される方は時々おられますが、いつもの痛み方であれば、問題ないと思われます。
目を酷使して目周辺の筋肉に負担をかけると、毛様体節(目のピントを調整する)に疲労が生じ、自律神経のバランスが乱れて頭痛等の症状が出現します。 一般的に眼精疲労が原因の頭痛は、 片頭痛と緊張型頭痛の2種類と考えられています。
神経痛というと坐骨神経痛や肋間神経痛が思い浮かびますが、頭にも神経痛が起こることがあります。
三叉神経痛、舌咽神経痛、後頭神経痛などが挙げられます。
三叉神経痛は、顔の片側に突然起こる激痛です。俗に「顔面神経痛」と呼ばれたりします。
何かのきっかけで、顔をしかめるほど強い痛みがいきなり「はしる」ものです。痛みのきっかけとして、会話をしたり、物を噛んだり、歯磨き、髭剃りなどがあり、風が吹くだけで痛む方もおられます。痛みがこわいため食事ができず、最後には栄養失調となってしまうようなこともあり得ます。
多くの場合、脳血管による神経への圧迫で起こります。薬による治療が有効ですが、良くならないときは、神経ブロックや放射線治療、場合によっては脳外科手術による治療が必要なこともあります。
後頭神経痛は、後頭部に突発して繰り返す痛みです。様々な原因がありえますが、原因となる病気がみつからないことも多く、自然に良くなることもしばしばあります。
一方、いつもと痛みかたが違う頭痛、頭が割れる様に痛い頭痛、日に日に頻度と程度が増していく頭痛などの場合は、「こわい頭痛」の可能性があり、くも膜下出血や脳動脈解離、脳血管攣縮、脳腫瘍などが考えられます。
このような場合は、早急に受診し脳の精査をしてください。
脳などの病気で起こる二次性の「こわい頭痛」の代表格は、くも膜下出血です。
典型的な症状は「今まで経験したことがない突然の激しい頭痛」で、吐き気をともなうことが多く、意識を失うこともあります。
ただし頭痛があまり目立たないこともあり、注意が必要です。ガーンとする衝撃感、気が遠くなる感じや、めまい感などの異変が、いきなり起こることが特徴です。
くも膜下出血の多くは、脳動脈瘤という血管のコブが破裂することで起こります。再出血が起こるとより重症となってしまうため、緊急の入院と早急な治療を要します。
くも膜下出血の患者さんは、ほとんどは救急車で病院に運ばれますが軽度のくも膜下出血はCTでも診断がつかないこともあります。
今まで経験したことのない突然の頭痛を自覚したときは、脳外科のある病院に救急受診してください。
MRIなどの検査で、偶然に脳の動脈瘤がみつかることがありますがそれぞれの症例で方針は異なってきます。経過観察で問題ないことが多いですが、まれに破裂してくも膜下出血となることもあります。
動脈瘤の場所、大きさ、形などが判断材料となります。
また最近、脳動脈の解離や、脳血管の攣縮による頭痛がみられることが増えているといわれています。
脳動脈の解離は、椎骨動脈という脳の後方へ行く血管にできることが非常に多く、急性に後頭部の比較的強い痛みを生じます。
頭痛の性状からは片頭痛や後頭神経痛などと区別することは困難で、MRI検査で明らかになることがあります。
大抵は何事もなく数ヶ月で回復しますが、動脈瘤や血管の狭窄をきたし、まれにくも膜下出血や脳梗塞を起こすことが知られています。
ウェイトトレーニングなどの運動や感情の高ぶりに際して突然に頭痛を起こすことがあり、ひとつの原因として可逆性の脳血管攣縮が注目されています。
脳血管の攣縮による頭痛は1〜3ヶ月で良くなりますが、症状だけではくも膜下出血などと区別はつかず、頭蓋内の出血や脳梗塞を伴うこともあり得るため要注意とされています。
脳腫瘍による頭痛は、突然に起こることはあまりなく、数ヶ月から数週間かけて徐々に強くなっていくことがあります。
頭痛は朝方に強くなることが多く、頭痛で目覚めたり、起きてしばらくすると改善することがあります。
頭痛に手足のシビレやマヒ、眼の見えにくさ、けいれんなどの神経症状を伴うときは、CTあるいはMRI検査がおこなわれます。また、脳ドックなどで偶然に脳腫瘍がみつかることも、ときにあります。
脳腫瘍がすべて悪性のものということはありません。良性の脳腫瘍の場合、手術せずに経過を見ることもあります。
手術が必要な場合、適切な治療を受ければ元の生活に戻れることも多いので、気になる症状があれば早めに受診することが重要です。
その他の二次性の頭痛としては、髄膜炎、高血圧、低酸素血症、頭蓋骨・頸・眼・耳・鼻・副鼻腔・歯・口の病気によるものなどがあります。
慢性頭痛の診療ガイドラインには、二次性頭痛を疑うサインとして以下が挙げられています。
あなたの頭痛が、いつもの頭痛や以前にもあった頭痛であるなら、それはおそらく「怖くない頭痛」でしょう。
しかし、今までなかったような頭痛や、だんだん強くなるような頭痛であれば、もしかすると危険な「怖い頭痛」かも知れません。